第8話 また一難 〜Misfortunes Never Come Singly〜
何が起こった……?
しかし、それを知るには要素が少なすぎる…
突然の船の揺れ、走っているような足音……複数人ということは分かるが。
だが、何人いるかまでは分からない…
倉庫の隅で2人はじっとしながら、ずっと外の様子を伺っていた。
しだいに、聞こえる音の種類が多くなり、
音量も大きくなってきた……要するに、誰かがここに近づいている。
外からは、叫び声、唸り声と共に、悲鳴みたいな声まで聞こえている。
魔物が乱入……にしては、人間の足音しか聞こえない…(ような気がする)
となると…考えられる答えは……
「まさか…海賊じゃねーよな…?」
ヴィーツも考えたことは同じだったらしい。
城を飛び出してから、本当にロクなことが起こっていない。
しかも、ほぼ全て自分の命にも関わっている事ばかりである。
ゆっくりと旅ができるのは何時になるのだろうか……
そもそも、追われていてゆっくり旅をすること自体無理みたいだが…
ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
その時、倉庫のドアが音を立てた。
二人共ビクッとして、倉庫の奥の箱の後ろに隠れる。
来るな……来るな……と思っても、現実は厳しいものである。
ついにドアが破られ、誰かが入ってきた。
箱の陰からおそるおそる覗いてみる……予想通り、海賊だった。
がっしりとした体付きで、片手には大きな剣を所持している。
その海賊は倉庫を見回した後、辺りを物色し始めた。
何か、この船に重要な物でも積まれていたのだろうか……
それとも、ただ単にこの船に目をつけて乗り込んできたのだろうか……
あの大臣に頼まれて、僕を追ってきた……という事じゃないだろうな……
フォールの頭の中で、こんな考えがぐるぐると回る。
ヴィーツは明後日の方向を向いて、縮こまってガタガタと震えている。
一方、海賊はと言えば、2人の存在にはまだ気付かずに、まだ物色を続けていた。
「ちっ……食いモンだけか?ここは……?」
舌打ちしながら、海賊はこう言った。
この言葉からすると、単にこの船に目をつけて乗り込んできただけか……?
「む………?」
海賊がこちらを向く……と同時に、フォールは箱の陰へ首を引っ込めた。
しかし、遅かったのだろうか………海賊の足音が近づいてくる。
近づくにつれ、フォールの心臓の鼓動が早まってくる。
「あっ…おい、行くな……」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
ヴィーツの制止を振り切って、フォールは剣を抜き、海賊に飛び掛っていった。
半分、パニック状態を起こし、声を上げながら来る彼に対し、
海賊は一瞬たじろぐも、片手に持っていた剣で応戦した。