第4話 〜South Town〜


「さて…どこから周りますか……」

荷物を泊まるホテルに預けた後、真は半分あてもなくぶらぶらと歩いていた。

サウスタウン……ストリートファイター達が自然と集まる街。
おそらく、今も何処かでストリートファイトが繰り広げられているだろう。
この街には様々なエリアがあり、その一つ一つが独自の顔を持っている。
摩天楼が林立しているエリアもあれば、飲食店が点在しているエリアもある。
余談だが、飲食店で一番賑わっている店といえば、「パオパオカフェ」であるらしい…

ふあぁ〜……列車の中で睡眠はとったはずだが、まだ眠い…
腕時計を見ると、午後4時過ぎ……昼を過ぎて、そろそろ夕方に入る頃だ。
日本では思いっきり真夜中だが…
眠いのなら、ホテルで睡眠を取った方が良いと思うのだが、
この男、妙な意地でも張っているのだろうか。
意地を張っているといえば、彼の服装もそうかもしれない。
この暑い中、ジャケットを羽織り、右手には黒いグローブ…
何処からどう見たって、この季節の服装ではない。(一応、グローブは装飾品ととれなくはない)
ただ、日本とは勝手が違うらしく、周りの目を気にする必要はなさそうだ…
彼にとっては日本でも意味がなさそうではあるが…

と、何処からか匂いが漂ってきた……匂いに誘われるように、歩を進める真。
すると、中華料理店が立ち並んでいるエリアが見えてきた。
特に腹が減っているわけでもないが……もともと気まぐれでしている旅だ、
……よってくか………そう考えて、チャイナタウンへと足を踏み入れた。

踏み入れた途端に匂いが一気に強くなった気がする…
むしろ、様々な匂いが混ざり合って、一体何の匂いだか分からなくなった。
一応、肉類の匂いが主…というのは分かるのだが…
この匂いからして、各店が鎬を削っているのであろう。
一度、このエリアの何処かの店で食べる価値はあるか……
周りの店舗を見回しながら思ってみる。
今はまだ晩飯には早いが……少し空いた腹にはいいかもしれない。
ただ、今は必要最低限のお金しか所持していないので、迂闊に購入できないが…


「アテナとお師匠はん、まだかいなぁ〜!?」
「遅いね…」
「早よせんと、肉まん冷めてまうで〜」

ある屋台の前に、肉まんが入った紙袋を持つ、真と同年代の少年と、
黄色を基調とする中国服を着、また、中国風の帽子を被った、
見た目が小学校高学年くらいの少年が立っている。
会話からして、誰かを待っているようだ……
紙袋を持った少年はイライラした様子で、片足を地面に叩き付けている。

「拳崇(ケンスウ)兄ちゃん…そんなにイライラしなくても」
「来んかったら、冷める前に食べるでぇー!!」

拳崇と呼ばれた少年は、紙袋から肉まんを取り出し、すごい勢いで食べ始めた。
紙袋に入っている肉まんすべてを一口で食べてしまいそうな勢いだ。
帽子を被った少年は、呆気に取られたようにその光景を見つめる。

「かぁ〜、うめぇ〜!!………ん?」

ものの30秒ほどで肉まんをまるまる1個たいらげた後、拳崇はある人物に気付いた。
右手を揚げ、その人物に向かって手を振る拳崇。

「京は〜ん!!お久しぶりぃ〜!!」

……京!?…何処だ…!?その声にすぐさま真は反応した。
周りを見回し、京を探す……が、自分に向けて手を振る人物に気付き、小さく溜息をついた。
確かに、自分は草薙京なる人物に似ている…それは認めよう…
しかし、京が格闘をする時の服装は……学ランだろ…?
それに、京より、自分は目が細めだし、髪は長め……って、この距離じゃ判別できないか…
こんなことを瞬時に思いつつ、ふと、手を振っている人物が、拳崇であると気付く。
何故なら、椎(しい)拳崇…彼はKOFの出場者の一人である。
もっと正確に言えば、サイコソルジャーチームの一員…チームメイトは、
麻宮アテナという女性と、鎮元斎(ちんげんさい)という酔拳の達人。
前者はアイドルで後者は80を越える高齢…大丈夫なのか?このチーム……
と、一瞬思ってしまうチームである。

だが、アテナ、拳崇共に超能力を所持しており、
鎮は中国拳法……主に酔拳の達人であり、2人の師匠でもある。
見た目で判断してはいけないチーム…それがサイコソルジャーチームである。

それにしても、KOF出場者の彼がここにいるってことは……
ここが今年のKOFの会場か…?(麻宮アテナというアイドルのライブの可能性もあるが…)
それを確かめるため、真は拳崇に一歩一歩近づいていく。
この後に、戦いが勃発することも知らずに………


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