第3話 作戦開始 〜The Operation is Started〜


「どう見ても……一致しているな…」

昼休み、シンはコンピューター室にいた。
ディスプレイには、地図らしきものが写っており、
シン自身、片手に地図を持ち、それを画面のと照らし合わせている。
そして、同じウィンドウの右下には、数字が羅列している…
何かのパスワードであろうか……いや、それは兎も角…

ディスプレイに写っている地図には、ある建物の場所だけ、
他の建築物と違う色で表示されている。
シンはもう一度、手に持っている地図と重ね合わせる。
その地図は、この町の一角を表したもの……更に、近くには連邦軍の基地がある。

次の時間は、担任がおらず、自習となっている……
ならば、ここに何があるのか、確かめに行くのも悪くは無いだろう…
シンはコンピューターの電源を切り、地図を元あった場所に返し、部屋を後にした。



「予定時刻には少し遅れたか……」

連邦軍基地周辺……5機のジオンのMSが待機をし、基地の様子を伺っていた。

「仕方ありませんよ……奴らのレーダーに引っ掛かったら、タダじゃ済みませんし」
「しかし、奴らの警備、新型を守っているには少なすぎますね」
「少しでも、俺達の目を反らせたかったんだろ」

隊長と兵士達の間で、会話が交わされていく。
ふと、兵士の一人がこんな言葉を漏らした。

「奴らの基地の近く……町があるようですが…」
「民間人は巻き込みたくは無い……ということか?」
「……はい」
「しかし、人間、非情にならなければいかん時もある…」

会話が止まった。昨日の真夜中のように……
しかし、それを切り裂くように隊長の声が響いた。

「今から、奪取作戦を開始する。全員心してかかれ!!」



「ここか……?」

コンピューター室から出て30分後、シンは目的の建物の前に来ていた。
いや、正確には目的の場所と思われる所だが………
ただ、この建物と断定できる証拠はあった……ドアの所に。

パスワードキー……それには違いなかった。
しかし、番号を自分が知っているはずが無い……

………まさか

コンピューターでフロッピーの内容を確認したとき、
地図の右下に羅列していた数字………

えーと………最初の数字は……



「いない!?どういうことだよ!!」
「そ、それはこっちが聞きたいよ!それに離せって!!」

一方こっちでは、クェイドがフェイの襟首を掴んで彼に質問を浴びせていた。
どうやら、シンが居なくなった事に気付いたようである。

「ちょっと、止めなっての」
「止めなよ……」

サナエとソフィが止めに入るが、クェイドは一向に聞く様子も無い。
むしろ、どけという言葉で一蹴している。

「止めなさいよ!!」

ユミの声が響く。あまりの大きさに、全員が呆気に取られる。

「わぁったよ……」

クェイドは手を離す。と同時に、フェイは首を押さえながら、彼から少し距離をとった。

「で……何処まで探したんだよ…」
「校内中、ほぼ全部探し……」

と、ユミが口を開いた瞬間だった……

ドガァァァァァン!!!!

爆発音が強烈な揺れと共に町を襲う。直後、銃器の音が町中に響いていく。

「ちょっと!!何よぉ!!」

サナエはもう、パニック状態だ。なんとか、フェイは彼女を落ち着かせようとしている。
一方で、ソフィは完全に固まってしまった。

「……避難するぞ」

クェイドは小さく言う。

「まだ何処にいるのか分からないのに?」
「仕方ねーだろ……あいつはあいつでどうにかするだろうさ…
 ぐずぐずしてると………死ぬぞ」

ユミの反論も虚しく、彼は先に歩き始めた。
彼女も仕方なく、他の三人にも、避難するように促す。

………大丈夫だよね……何処かに避難してるよね



くっ……何だ!?
そう思って、パスワードを入れる指を止め、辺りを見回す。
すると、連邦軍基地の方向から、とんでもないものが目に入った。

………ジオンのMS……!?
赤いモノアイの暗い緑の機体が、連邦軍基地を襲撃していた。
銃声が鳴り響き、爆発音が更に地面を轟かす。
爆発にひるむが、記憶を搾り出し、パスワードを必死に入れる。
しかし………開かない。

違うのか……どれだ……何を入れれば良い……
避難も考えた。しかし、何故か好奇心…といおうか、そんな気持ちが優先される。
だが、焦れば焦るほど、数字が分からなくなってくる……
何度か、家のコンピューターでも見ていたのではあるが…

これか……?
記憶の奥底を探り、もう一度数字を入れてみる……
全部入れた……と思った途端、爆風がシンを襲った。

「ぐっ……」

息が詰まって声にならなかった。
少々飛ばされたものの、すぐに立ち上がり、
すかさずパスワードの入力ボタンを力いっぱいに押した。

………開いた!!

一気に駆け込んだ。
何が待ち構えていようが、もう怖くは無かった。
倉庫のような部屋の隅にあった階段を一気に駆け下りた。
このフロッピーが家にあった理由、それだけを確かめたかった。


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