第1話 闇夜 〜Darkness Night〜
「昔、連邦とネオ・ジオンの戦争において、開発されるはずだったMS…か…」
真夜中、5機のジオンのMSが行動を展開していた。
その中の1機のみ、隊長機なのか、頭部にツノが付いており、
他の4機よりも、装備が多く付いている。
皆、闇に紛れるような暗い塗装をされ、赤いモノアイが一つ、頭部にあった。
どうやら、ジオンのあの名機を再現し、更にチューンしたものらしい。
「そんな昔から、そのMSは計画されていたのですか?」
部下の一人が、隊長へと、先程の独り言に対して質問をする。
目つきが鋭く、濃い髭を蓄えている隊長へと。
「当時、設計はされたものの、開発段階で戦争が終了し、そのまま中断したそうだ。
設計図共々、完全に破棄された、ということになっているが、
今になって、開発されたという情報が入ってな……
しかも、最新鋭の技術も投入して開発されたらしい」
「しかし、ロールアウトされたのが、半年以上も前ですよ?
何故、連邦は戦地にそのMSを投入しなかったんだ?」
「パイロットが居なかったんだろ……」
「ということは、パイロットが見つかる前に、そのMSを破壊する訳ですね」
「いや、ただ単に破壊するだけではどうにもならん。
連邦の技術を、この眼で確かめるのも任務だ。
つまり、破壊するのではなく、MSの奪取だ」
兵士達と隊長の会話が、淡々と続けられていく。
「主任務は新型MSの奪取……
しかし、そのMSが置いてあるのは、当然連邦軍の基地内だ」
「奇襲を掛けるつもりですか?」
「当然だ、向こうも、新型を奪われないよう、それ相応の対処はするであろう。
数では不利なのは明白だ。ならば、奇襲で連邦の奴らを
一泡吹かしてから新型を奪うより仕方あるまい」
「でも、このスピードだと、目的の連邦軍基地まで間に合いませんよ?」
「誰が夜襲をすると言った……?」
間に合わないという兵士の不満の声に、部隊長は即座に反応した。
「確かに、夜襲もやる価値は高いかも分からぬ。
だが、今回、夜襲の命令は下らなかったものでな」
「新型を破壊してしまう恐れがあるからですかね……?」
「分からぬな……上の考えていることはな……
俺達は上の命令に従って、行動するだけだ……ただの駒なんだろ」
それ以降、誰も何も言わなかった。
ただ、MSの歩く音だけが、闇へと消えていくだけだった。